当時は内容がよく理解できなくて、結局この実験のレポートは出さなかったのだけど、期末になったらちゃんと単位がついていた。せっかく他学部から聞きに来てくれたので、ということでおまけしてくださったとのこと。その後、自分でちゃんとやり直してみようと思いつつ、気が付いたらウン十年もたってしまった。
…というわけで、再履修のつもりでエクマンパンピングの実験をやってみることにした。
とりあえず今回は水槽の性能などを確かめるための予備実験。準備するものは以下の通り。
- 回転台:レコードプレーヤーを使用する。回転数を変えられるので便利。(電動ろくろは騒音が出るので使用を見送った)
- 水槽:円筒形のガラス食器を使用する。ターンテーブルの真ん中のでっぱりの邪魔にならないよう土台を別途用意する。
- ストップウォッチ:ラップ・スプリット計測が可能でメモリー付きのもの。
- 浮子:水の回転速度を測るのに使う。今回はアルミホイルを、沈んでしまわないように空気がたまるような形にして使った。
手順は以下の通り。
- 水槽に水を張り、浮子を浮かべる。
- 回転台の上に置いて45回転/分で回転させる。
- 浮子が1周するのにかかる時間(回転周期)を測る(ちゃんと計れているかどうか確認するために複数回測る)
- 途中で回転数を33 1/3回転に切り替える。
- 浮子の回転周期を測り続ける。
そして得られた結果が下のグラフだ。ストップウォッチで正しく周期を測るのは難しいが、一応なんとかなりそうだ。なれればもっと正しく測れそうな気もする。
![]() |
図1 : レコードプレーヤーの回転数設定を45回転/分から33 1/3回転/分に切り変えた時の水の回転周期の変化。青が回転周期の生の値、オレンジはその5区間移動平均、黄と緑の線は45回転/分、33 1/3回転/分にセットした時の実際の回転周期。
せっかくなので、スピンダウンタイム(水の回転が水槽の回転になじむまでの時間スケール)についてざっくり答え合わせをしてみよう。水槽の深さをH、回転の角速度をΩ、水の動粘性係数をνとすると、水槽に対する水の総体的な回転数が1/e (=1/2.71828...)になるのにかかる時間スケール(スピンダウンタイム)は以下の式で与えられる。
T=fδ_e/2H
ただしfはコリオリパラメータで、
f=2Ω
δ_eは水底のエクマン境界層の厚さで、
δ_e=√(2ν/f)
である。(式の導出等はは京都大学の久保川先生のテキスト参照のこと)
ここで、ν~1.0e-6 m^2 s^-1, Ω~8.4 rad s^-1, H~0.1 mとして計算するとT~48 sを得る。上のグラフでは横軸を測定番号にしているので分かりにくいけれども、だいたい30~40秒くらいで水の回転が水槽の回転になじんでいる。適当にやって適当に検算した割にはまぁいい線行っているのではないか。
とりあえず今回はこんなところ。時間をみてまたやってみよう。